交通事故の慰謝料でリハビリ通院分も請求できる? 算定基準や注意点を解説
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令和2年版の仙台市統計書によると、仙台市における令和元年中の交通事故件数は2743件でした。死傷者数は3303名で、そのうち21名の方が命を落としています。
交通事故に遭い怪我を負ってしまうと、治療費や入院費のほか、リハビリ通院の費用や仕事を休んだ場合の補償などが気になるところです。
本コラムでは、交通事故の被害に遭い、リハビリが必要な方のために、リハビリに関する慰謝料の考え方について、仙台オフィスの弁護士が解説します。
1、リハビリ期間も慰謝料の対象になる?
リハビリは、一般的には交通事故に遭う前の状態まで身体機能を回復させるのが目的となるため、怪我そのものに対する治療とは少し別のものとも考えられるでしょう。
外傷や骨折などの治療が終了しても、怪我の程度や部位によっては長いリハビリ期間が必要になりますが、リハビリ期間中も慰謝料を算定するための期間に含まれるのでしょうか?
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(1)リハビリ期間も慰謝料の対象
純粋な治療期間のみならず、リハビリ期間も慰謝料の算定対象に含まれます。リハビリは、交通事故によって生じた、身体の不自由の改善を目的としているからです。
外傷や骨折が改善しても、身体の機能が完全に回復したとはいえません。筋肉や神経を傷めてしまっている場合は、怪我の治療よりもリハビリのほうが重要だととらえられることもあるので、リハビリもれっきとした治療のひとつです。
そのため、症状固定前であればリハビリ治療費はもちろんのこと、その期間の慰謝料についても請求することが可能です。 -
(2)リハビリ期間によって慰謝料額は変わる
慰謝料は、入通院の期間によって金額が変わります。つまり、リハビリ期間が長くなれば慰謝料額は増額され、短くなれば慰謝料額は低くなります。
2、症状固定後のリハビリも慰謝料の対象になる?
「症状固定」とは、身体の不自由がある程度は改善されたものの、一般的な治療を施してもそれ以上の改善は見込めなくなった状態を指します。
では、症状固定後にリハビリ通院した場合、その分の慰謝料を請求できるのでしょうか?
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(1)症状固定後はリハビリ分の慰謝料を請求できない
原則として、症状固定を受けたあとのリハビリについては、慰謝料請求が認められません。
症状固定とは、前述のとおり、それ以上治療をしても改善が見込めないような状態のことをいいます。必要な治療期間について慰謝料請求が認められるのは当然ですが、これ以上の治療は不要と判断された場合、治療費はもちろん、基本的には慰謝料も認められません。 -
(2)将来の治療費であれば請求できる可能性がある
症状固定後のリハビリについて請求が認められる可能性があるのは、将来の治療費部分です。症状固定された状態を最善の状態として、その状態を維持するためにはリハビリが不可欠である場合などには、将来かかる見込みの治療費の請求が認められる場合があります。
半身まひなどの重大な後遺症が残った場合のように、長期にわたる継続的なリハビリが必要なケースでは、症状固定後でも将来治療費の請求が加納な場合もあります。
3、リハビリに伴う慰謝料の基準
慰謝料の算定基準には、次の3つがあります。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
どの基準によって算定されたかによって、慰謝料の金額は大きく変化します。それぞれの算定基準について、考え方や特徴をみていきましょう。
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(1)自賠責基準
道路上を走る自動車には、必ず自動車損害賠償責任保険の加入が義務付けられています。
これを略して「自賠責保険」といい、四輪の自動車だけでなく、自動二輪や原動機付自転車でも加入せずに道路を走行すると処罰の対象です。
自賠責保険は強制保険で、次のような特徴があります。- 人身損害のみが対象で、物損部分は補償しない
- 被害者1名ごとに支払限度額が設定されている
- 被害者が相手の保険会社・共済組合に直接請求できる
- 被害者に重過失がある場合以外は減額されない
自賠責基準では、治療関係費などが支払われるほか、慰謝料が支払われます。
自賠責基準での慰謝料は、治療期間(事故から完治日または症状固定日まで)の全日数、または実通院日数(入院日数+実際に通院した日数)の2倍のどちらか少ない日数に4300円をかけた金額となります。
ただし、自賠責基準は、最低限の保障を目的とした保険であるため、その金額は決して十分なものとはいえません。 -
(2)任意保険基準
自賠責保険とは異なり、任意で加入することができるのが「任意保険」です。
任意保険会社における算定基準は一律ではなく、保険会社ごとに決まっています。基準自体は公開されていませんが、一般的に、自賠責基準よりは高いものの自賠責基準に近い金額となることが多いため、任意保険基準であっても十分な補償がなされるケースは少ないです。 -
(3)弁護士基準
3つの算定基準のうち、もっとも高額な慰謝料を認めるのが「弁護士基準」です。
弁護士が示談交渉や裁判で利用する算定基準ですが、弁護士が独自に決定しているわけではありません。実際の裁判で認められてきた慰謝料額の相場を基準化したものなので、別名で「裁判所基準」とも呼ばれています。
4、注意したいリハビリ内容
リハビリ費用も含めた慰謝料を請求したいと考えるのであれば、通院期間中のリハビリ内容にも注意しておきましょう。
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(1)通院頻度が低い
リハビリを継続していたとしても、通院の頻度が少ないと通院の期間ではなく、通院実日数をもとにした基準で算定されてしまうおそれがあるので注意しましょう。また、治療費の打ち切りのタイミングに影響する可能性もあります。
リハビリ計画を立てるのは医師や理学療法士ですが、できる限り積極的なリハビリ計画を立ててもらえるように依頼しましょう。 -
(2)漫然治療になっている
リハビリの内容が「漫然治療」とみなされる場合は、治療のための通院と評価されず、治療費の支払いを中断されたり、慰謝料の金額を減らされてしまうおそれがあります。
漫然治療にあたるケースとしては、次のような状態が考えられます。- 機能回復のトレーニングをせずマッサージのみ受けている
- 湿布薬やビタミン剤などの内服薬の処方を受けるだけになっている
- ネックカラー・頸椎(けいつい)カラーを長期間にわたって装着している
リハビリ期間について慰謝料を請求する場合、リハビリ内容についても詳しく開示することになります。医師の診断・指示に従って適切なリハビリに努めるのはもちろんのこと、弁護士などに損害賠償の範囲として認められる相当性がある治療かを確認しながら進めることが大切です。
5、まとめ
交通事故による外傷は治ったようにみえても、傷ついた筋肉や神経の運動機能を回復させるためにはリハビリが必須です。
交通事故によって必要となったリハビリに関する慰謝料を請求する場合は、弁護士が弁護士基準での交渉を行うことにより、慰謝料の増額を期待できます。自動車保険のオプションで弁護士費用特約がついてれば、多くのケースで弁護士費用について自己負担が発生しないので、積極的に活用することをおすすめします。
交通事故の被害に遭ってしまった場合は、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスにご相談ください。交通事故の慰謝料トラブルについて対応実績を豊富にもつ弁護士が、適切な補償を受けることができるよう全力でサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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