アルバイトの採用に雇用契約書や労働条件通知書は必要? 弁護士が詳しく解説
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大型連休となった2019年のゴールデンウイーク、仙台市の牛タン店では人手不足のため、普段は店頭に立たない管理職までも接客業務に当たったとニュースになりました。
このような人手不足の際、アルバイトの採用を検討する雇用主も多いでしょう。しかしアルバイトの雇用については、正社員に比べて簡単な手続きで済ませてしまう雇用主もおり、中には書面の交付を行わず口頭で済ませてしまうケースもあるようです。
アルバイトの雇用であっても、義務を怠ると労働基準法違反の可能性があります。
それでは、アルバイトの採用にあたって必要な契約とはどのような内容でしょうか。雇用契約書や労働条件通知書を作成する必要性について、仙台オフィスの弁護士が詳しく解説します。
1、アルバイトの採用にも雇用契約書は必要?
アルバイトは、正社員と比べて勤務日数や時間などの勤務条件が緩やかに設定されていることが多く、入社時の手続きは簡易的なもので構わないと考えている雇用主がいます。そのため、面接時に持参した履歴書に直接メモを残す程度で、あらためて書面を作成しないまま勤務をスタートさせてしてしまうケースがあるようです。
しかし、アルバイトといえども法律上の雇用関係は正社員と変わりなく、労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、雇用保険法、労災保険法なども適用されます。
労働基準法では、雇用形態に関係なく従業員に対して書面による労働条件の提示などを義務付けています。
最近は、アルバイト情報誌や求人サイトでも労働条件の通知義務を周知しているため、雇用主が書面を発行しない場合には自ら催促する必要があると認識している労働者も増えています。とはいえ、労働者との関係を良好に保つためにも、催促される前に書面を提示するようにしましょう。
2、雇用契約書と労働条件通知書とは?
一般的に、従業員を採用した際に交付する書類として雇用契約書や労働条件通知書などがありますが、それぞれの書類を理解しておきましょう。
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(1)雇用契約書とは
雇用契約書は、雇用主と従業員の合意に基づく書類です。雇用契約は口頭でも成立しますが、「言った、言わない」のトラブルを避けるためにも、書面で契約した事実を記録しておくことが望ましいでしょう。雇用契約書の中に労働条件を記載して、労働条件通知書と同一の書類として交付することも可能です。その場合は、労働条件を記載した書面を別途発行する必要はありません。また、必要な内容がきちんと記載されていれば書面の名称に規制はなく、同様の効果を発揮します。
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(2)労働条件通知書とは
労働条件通知書は雇用主が通知するもので、労働基準法などにより労働条件の明示が義務付けられており、次の内容を明記する必要があります。
- 労働契約の期間(更新の有無も含む)
- 仕事をする場所や仕事の内容
- 勤務時間、残業の有無、休憩時間、休日・休暇、交替制勤務の場合はその内容
- 賃金の決定、計算と支払い方法、締め日と支払い時期
- 退職に関すること、解雇事由
3、雇用契約書や労働条件通知書を作らないとどうなる?
アルバイトの雇用にあたり、これらの書類を提示していなかった場合はどうなるのでしょうか。
労働基準法では、労働条件を書面で明示することが義務付けられているため、それを怠ると労働基準法違反として30万円以下の罰金の対象となります。
また、雇用主とアルバイトとの間で共通の認識を持つためにも、書面の交付は必要であると理解しておきましょう。認識のズレが生じると、せっかく採用してもすぐに辞めてしまう原因となります。
4、労働契約の禁止事項
労働基準法では、労働条件に含めてはいけない事項も定めています。
たとえば、「入社後1年以内に退職した場合は5万円の罰金」や「社用車をぶつけたら修理代は自己負担」など、労働者に違約金を支払わせる内容や具体的な金額をあらかじめ提示することは禁止されています。
これはミスについての責任を一切問えないという意味ではなく、あくまで「あらかじめ」提示することを禁止したものです。念のためという感覚で記載してしまうこともあるので注意しましょう。
同様に、月々の給料から天引きして労働者にお金を返済させることなども禁止されています。
5、不安な点は弁護士に相談
雇用契約書や労働条件通知書を作成するにあたり、書面そのものが法律に違反しているとトラブルに発展しかねません。労働時間に問題はないか、時間外労働や休日労働についての割増率は正しい基礎時給比を満たしているか、必要な休憩時間を与えているかなど、法律の記載要件を満たしていることを確認しなければなりません。
しかし、初めてアルバイトを採用する雇用主は、これらの要件が分からないという方がほとんどです。その際はぜひ法律のプロである弁護士に相談してみてください。労働基準法はもちろん、アルバイトの採用にあたっての注意点など、採用後に想定されるトラブルの予防策も知ることができます。
6、まとめ
今回はアルバイトを初めて採用する方に向けて、雇用契約書や労働条件通知書の必要性についてお伝えしました。アルバイトであっても、雇用に必要な書面は必ず提示しておきましょう。これは労働基準法で定められていることですが、雇用主とアルバイトの信頼関係にもつながり、双方が気持ちよく仕事をするうえで大切な手続きなのです。契約書の作成や労働条件で不明な点がありましたら、ベリーベスト法律事務所・仙台オフィスまでご連絡ください。仙台オフィスの弁護士が力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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