アルバイトがSNSに不適切投稿! 損害賠償を請求できるか解説
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仙台市民ならおなじみの河北新聞、平成31年3月6日のコラムで、バイトテロについて触れられていました。バイトテロとは、一般的に飲食店やコンビニなどのアルバイトが不適切動画をSNSへ投稿する行為を指します。ニュースやワイドショーなどでも大きく取り上げられ、記憶に新しい方も多いでしょう。
本人たちにとってはいたずら心や仲間内で楽しむためのネタであっても、経営者にとっては冗談では済まされません。非常に多くの被害が出る可能性があります。そこで、不適切動画を投稿したアルバイトに対して、解雇などの処分だけでなく、刑事告訴や損害賠償請求などの法的措置を検討している企業は少なくないようです。今や、アルバイトの不祥事の予防や事後対策は、規模を問わず飲食店にとって、重要な経営課題といえるでしょう。
そこで、今回はアルバイトの不祥事でお悩みの仙台の飲食店や小売店経営者の方のために、アルバイトに対する法的措置の内容について、仙台オフィスの弁護士が紹介します。
1、相次ぐアルバイトの不祥事
かつては、アルバイトが引き起こす不祥事といえば、売上金や釣り銭などのごまかし、食材や商品などの持ち帰りといったものでした。そのような不祥事は、悪質なものは警察へ被害届を出すこともありましたが、ほとんどの場合は、解雇などの処分を行い、受けた損害は本人や親などから弁済してもらうことで、外部に漏れることはあまりありませんでした。
しかし、インターネットとスマートフォンの普及により、状況は大きく変わっています。
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(1)スマホとSNSの普及による不適切投稿
平成22年頃には日本国内でもスマホが普及し、TwitterやインスタグラムなどのSNSを利用して、誰でも簡単に自分で撮影した画像や動画を投稿することができるようになりました。こうした背景とあいまって、不適切投稿という不祥事があちこちで発生するようになっています。
不適切な動画や画像を投稿されてしまうと、雇用側は大きなダメージを受ける可能性があります。アルバイトによる不適切投稿が原因で店舗経営者が破産したり、チェーン店の店舗が閉店する事態に追い込まれてしまったりしたこともあります。 -
(2)企業側の動きに変化
近年になっても、大手回転ずしチェーンや牛丼チェーン、定食チェーン、コンビニなどで、アルバイトによる不適切投稿が相次いでいます。食材や食器などの什器を不衛生に取り扱う様子を撮影した画像や動画は、ブランドイメージを損なうだけでなく、客離れや休業による売り上げ減、株価の下落など、企業に多大な損害を与えます。
このようなアルバイトの不祥事は、突発的に起き、雇用主が大きなダメージを受けることから、「バイトテロ」とも呼ばれています。大手企業では、スマホの現場への持ち込み禁止や社員教育などにより、「バイトテロ」の予防に努めてきました。しかし、それでも相次ぐ不祥事を抑制するために、刑事告訴や損害賠償などの法的措置を検討する動きが出ています。
2、アルバイトの不祥事はどのような刑罰に?
では、アルバイトの不適切投稿は、どのような刑罰に処せられるのでしょうか。
食材や食器などを不衛生に取り扱う動画などが拡散されることで、動画を見た顧客たちは「あの店は不衛生で汚い」という嫌悪感を抱くでしょう。また、虚偽の事項を内容とする店の悪い評判が広がり、売り上げが減少したことなどを立証できれば、アルバイトを刑法第233条の信用毀損(きそん)罪・業務妨害罪に問うことができます。有罪になったときの罰則は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
あるいは、「他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者」として軽犯罪法第1条31号に該当するとして、罪に問うこともできる可能性もあります。有罪になれば、拘留(最長で29日間)または科料(1000円以上1万円未満)に処せられることもあります。
さらに、冷蔵庫や棚などの什器を破損、もしくは使用できないと考えられるまで汚染させた場合は、刑法第261条の器物損壊等罪等に問えることがあります。罰則は「3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料」です。
3、アルバイトに対する損害賠償について
アルバイトの不適切投稿による売り上げ減などの損害については、たとえ学生であっても、民事上の損害賠償を請求することが可能です。店の規模や種類、店舗数などによって損害の額は異なりますが、下記に挙げる例のように、損害請求は広い範囲におよびえます。
- 店のイメージダウンに対する損害
- 店舗の清掃費用
- 新しい什器の購入費用
- 廃棄することになった食材などの仕入れ代金
- 客へ返金した飲食代金・購入代金
- 休業したことで失った利益
- 不適切な行為が原因によって、食中毒などを起こした客への賠償費用
- 閉店・廃業することで、支払うことになった人件費
- 賃借物件の退去費用(違約金、原状回復費用など)
- おわび広告・おわびの通知などの費用
上記のような損害額を積み上げることで、多額の損害賠償を請求することは可能です。しかし、どこまでの損害が認められるのか因果関係が問題となり請求額から大幅に減額されるケース、アルバイト本人が払える額には限界があり家族も含めた支払い能力などを鑑みて和解するケースなどもあります。
また、過大な損害賠償をすることは、他のアルバイトや従業員を委縮させるだけでなく、かえって店の評判を落としてしまうリスクもあります。実際に損害賠償請求を行うのか、請求額はどうするのかといった点は慎重な判断を要します。まずは弁護士に相談されるとよいでしょう。
4、撮影者に対しても損害賠償請求できるのか?
撮影者に対しても損害賠償を請求することは可能です。
民法第719条1項前段では、「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」と定められています。たとえ不適切な投稿をしていなくても、撮影者は行為者と連帯して、損害賠償の責任を負うことがありえます。
撮影者ではなくても、該当の画像や動画を拡散させる目的で再投稿されたことで、損害が生じたというケースもあるかもしれません。その際、たとえ再投稿した者が店舗関係者や該当行為に関わった者でなくとも、再投稿した者に対して民事責任などを問える可能性があるでしょう。
5、親の監督責任はあるのか?
たとえ未成年の学生アルバイトであっても、直ちに親に対して損害賠償責任が認められるわけではありません。
ただし、以下のケースでは、親に対しても損害賠償を請求できる可能性があります。
- アルバイトの親が本人に不適切な投稿や拡散を促した事実がある
- アルバイトを雇用するにあたって、「本人が不法行為をしたら保護者(身元保証人)が補償する」といった宣誓書や雇用契約書で結んでいた
もっとも、雇用時にアルバイトの親を身元保証人として契約していたとしても、「特に定めがなければ原則として3年間」と身元保証法に定められています。期間を長く定めたとしても「最長5年」までと定められていて、かつ自動更新が認められていません。
6、アルバイトの不祥事の対応は弁護士に相談
アルバイトの不適切な投稿により店の経営に重大な損害が発生した場合は、個人的に対応する前に弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、穏便な解決に向けた損害賠償についての交渉を行うことができます。さらには、刑事告訴の手続きも可能です。また、顧客からのクレームへの対応方法、不祥事を起こしたアルバイトに対する適法な解雇処分、不祥事を予防するための雇用契約や従業員教育の見直しなど、さまざまなアドバイスを受けることができます。
7、まとめ
今回は、アルバイトの不適切投稿により、経営に重大な被害を受けた場合の法的措置について紹介しました。労働力不足の今、アルバイトは貴重な労働者です。飲食店や小売店の経営には欠かせない存在となっているでしょう。経営者とアルバイトを含む労働者が良好な関係を築き、順調な経営を続けていくためにも、弁護士のアドバイスにより、万全のコンプライアンス体制を整備していくことが求められます。
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