営業停止処分を受けてしまいそうな場合の適切な対処法
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- 営業停止処分
建設業者が建設業法の規定に違反すると、営業停止処分を受けることがあります。営業停止処分を受けないように、建設業法の順守を徹底しましょう。
もし営業停止処分を受けてしまったら、速やかに弁護士へ相談して対応を検討することをおすすめします。
本記事では、建設業者に対する営業停止処分について、概要・手続きの流れ・対処法・不服申立てなどを、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。
出典:「長時間労働が疑われる事業場に対する令和4年度の監督指導結果を公表します」(宮城労働局)
1、建設業者に対する営業停止処分とは
建設業者は、建設業法の規定を順守しなければなりません。建設業法に違反すると、営業停止を含む行政処分を受けるおそれがあります。
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(1)建設業法に基づく行政処分の種類|指示・営業の停止・許可の取消し等
建設業法に違反した建設業者は、以下の行政処分を受けることがあります。
① 指示処分
国土交通大臣または都道府県知事は、以下のいずれかに該当する建設業者に対して、必要な指示をすることができます(建設業法第28条第1項、第2項、第4項)。- 建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害をおよぼしたとき、または危害をおよぼすおそれが大であるとき
- 請負契約に関し不誠実な行為をしたとき
- 建設業者、ならびにその役員等、支配人および支店または支店に準ずる営業所の代表者が、その業務に関し他の法令に違反し、建設業者として不適当であると認められるとき
- 建設業法上の各種規定に違反したとき
- 主任技術者または監理技術者が工事の施工の管理について著しく不適当であり、かつ、その変更が公益上必要であると認められるとき
- 無許可で建設業を営む者と下請契約を締結したとき
- 特定建設業者以外の建設業を営む者と、4500万円(建築工事業では7000万円)以上の下請契約を締結したとき
- 情を知って、営業停止処分または営業禁止処分を受けた者と、停止または禁止されている営業の範囲に係る下請契約を締結したとき
- 特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律の各種規定に違反したとき
② 営業の停止・営業の禁止
国土交通大臣または都道府県知事は、①の指示に従わない建設業者に対して、1年以内の期間を定めて、その営業の全部または一部の停止を命ずることができます(建設業法第28条第3項、第5項)。
また、建設業者が営業停止処分を受けた場合は、下表に挙げる者に対しても、営業停止処分と同一の期間を定めて、新たに営業を開始することが禁止されます(同法第29条の4第1項)。
③ 許可の取り消し・営業の禁止
①に該当し、その情状が特に重い場合や、営業停止処分に違反した場合には、国土交通大臣または都道府県知事は、建設業者の許可を取り消さなければなりません(建設業法第29条第1項第8号)。
また建設業者が許可を取り消された場合には、下表に挙げる者に対しても、許可を取り消された建設業について5年間、新たに営業を開始することが禁止されます(同法第29条の4第2項)。営業停止処分を受けた建設業者 営業禁止処分の対象者 法人 - 役員等
- 支配人
- 支店または支店に準ずる営業所の代表者
個人 - 本人
- 当該処分の原因である事実について相当の責任を有する支配人、および支店または支店に準ずる営業所の代表者
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(2)営業停止処分を受けた場合にできなくなること・できること
営業停止処分を受けた建設業者は、当該処分によって指定された営業について、以下の行為などができなくなります。
営業停止処分を受けた場合にできなくなること - ① 新たな建設工事の請負契約の締結(仮契約等に基づく本契約の締結を含む)
- ② 処分を受ける前に締結された請負契約の変更であって、工事の追加に係るもの(工事の施工上特に必要があると認められるものを除く)
- ③ ①および②、ならびに営業停止期間満了後における新たな建設工事の請負契約の締結に関連する入札、見積り、交渉等
※地域限定・業種限定・公共工事またはそれ以外の工事に係る限定が付されている場合は、その限定の範囲内における①~③の行為
これに対して、以下の行為については、営業停止期間においても行うことができます。
営業停止処分を受けてもできること - ① 建設業の許可、経営事項審査、入札の参加資格審査の申請
- ② 処分を受ける前に締結された請負契約に基づく建設工事の施工
- ③ 施工の瑕疵に基づく修繕工事等の施工
- ④ アフターサービス保証に基づく修繕工事等の施工
- ⑤ 災害時における緊急を要する建設工事の施工
- ⑥ 請負代金等の請求、受領、支払い等
- ⑦ 企業運営上必要な資金の借入れ等
営業停止処分を受けた場合にできなくなること・できることについては、国土交通省が公表している「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」の別表において例示されているので、併せてご参照ください。
2、建設業者に対する営業停止処分の流れ・受けた場合の対処法
建設業者に対して営業停止処分が行われるまでの手続きの流れと、実際に営業停止処分を受けた建設業者の対処法を解説します。
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(1)建設業者に対する営業停止処分の流れ
建設業者に対する営業停止処分は、行政手続法に定められた不利益処分の規定に従って行われます。
国土交通大臣または都道府県知事が、建設業者に対して営業停止処分をしようとする場合は、当該建設業者に弁明の機会を付与しなければなりません(行政手続法第13条第1項第2号)。
建設業者による弁明は、原則として書面(弁明書)を提出して行います(同法第29条第1項)。その際、建設業者は証拠書類等を提出することができます(同条第2項)。
国土交通大臣または都道府県知事は、前掲の「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」、または各都道府県において定めている基準を踏まえつつ、建設業者に対する営業停止処分の要否を判断します。
実際に営業停止処分を行うことが決まった場合は、国土交通大臣または都道府県知事が建設業者に対し、営業停止処分を行う旨およびその理由を示します(同法第14条第1項本文)。
ただし、理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、営業停止処分後にその理由が示されることもあります(同条第1項但し書き、第2項)。 -
(2)建設業者が営業停止処分を受けた場合の対処法
建設業者が営業停止処分を受けた場合は、まず不服申立てをするかどうかを検討しましょう。不服申立ての手続きについては後述します。
不服申立てをしない場合は、営業停止処分に従い、所定の期間にわたって該当する営業を停止しましょう。営業停止処分に従わないと、建設業許可取消処分を受けるおそれがあるので、確実に処分を順守することが大切です。
3、営業停止処分に対する不服申立ての手続き
建設業者は、営業停止処分に対して不服申立てを行うことができます。
不服申立ての方法は、「審査請求」と「取消訴訟」の2つです。
営業停止処分を行った国土交通大臣または都道府県知事に対して、当該処分の当否を再考した上で取り消すよう請求します。
審査請求の期間は原則として、(a)営業停止処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月、または(b)営業停止処分があった日の翌日から起算して1年のいずれかが経過するまでです。ただし、いずれも正当な理由があるときはこの限りではありません。
② 取消訴訟(行政事件訴訟法第8条以下)
裁判所に対して、判決によって営業停止処分を取り消すことを求めます。取消訴訟は、審査請求を経ていなくても提起することができます。
取消訴訟の出訴期間は原則として、(a)営業停止処分があったことを知った日から6か月、または(b)営業停止処分の日から1年のいずれかが経過するまでです。ただし、いずれも正当な理由があるときはこの限りではありません。
なお、審査請求または取消訴訟の提起を行っても、原則として営業停止処分の効力は妨げられません(行政不服審査法第25条第1項、行政事件訴訟法第25条第1項)。
ただし、建設業者の申立てまたは職権により、営業停止処分の執行が停止されることがあります(行政不服審査法第25条第2項以下、行政事件訴訟法第25条第2項以下)。
不服申立ての可否および進め方については複雑な検討を要するので、弁護士に相談することをおすすめします。
4、建設業者の経営を安定させるには、顧問弁護士の活用を
建設業法を順守し、安定的に建設業を営むためには、顧問弁護士と契約するのがおすすめです。顧問弁護士のアドバイスを踏まえて営業すれば、法令違反のリスクを最小限に抑えられるでしょう。
ベリーベスト法律事務所は月額3980円からの顧問契約サービスをご用意しており、コストを気にせずニーズにあわせて最適なプランを選択することができます。業界ごとの専門チームも設置しておりますので、建設業の実態に即したサポートもご相談ください。
5、まとめ
建設業者が営業停止処分を受けそうな場合、または実際に営業停止処分を受けてしまった場合は、弁護士のアドバイスを受けながら適切に対応しましょう。
ベリーベスト法律事務所は、建設業者からのご相談を随時受け付けております。営業停止処分への対応等にお悩みの建設業者は、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスにご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています