弁護士が解説! 企業とフランチャイズ契約をする際、気を付けるべきこととは

2019年07月25日
  • 一般企業法務
  • フランチャイズ契約
弁護士が解説! 企業とフランチャイズ契約をする際、気を付けるべきこととは

将来的な雇用不安が心配される昨今、フランチャイズのオーナーとして一国一城のあるじになろうとお考えの方は、ここ仙台市内にも多いことと思います。

しかし、本部からのさまざまな支援が期待できるフランチャイズであろうと事業がうまくいかないリスクは考えられます。そして、本部との間でトラブルが発生してしまうことがあり、全国的に問題となっています。このような問題は、東北有数の経済圏である仙台でも潜在的にあるのではないでしょうか。

このようなトラブルは、当初のフランチャイズ契約書の不十分さが原因である場合があります。そこで、これからフランチャイズ事業への進出をお考えの方にフランチャイズ契約書に関する注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 仙台オフィスの弁護士が解説します。

1、フランチャイズ事業とは?

一般的なフランチャイズ事業とは以下のような事業形態のことを指します。なお、特定連鎖化事業とも呼ばれています。

●本部(フランチャイザー)は、フランチャイズに加盟する加盟者(フランチャイジー)に対して、本部がもつブランドや商品・サービスを使用する権利などを付与し、さらには加盟店に対して各種のサポートなどを行う。
●その対価として、加盟店は本部にあらかじめ契約で定められた開業資金やロイヤルティーなどを支払う。

上記の細目については、加盟者と本部の間で締結される「フランチャイズ契約」で定義されます。

2、フランチャイズ事業のメリット

フランチャイズという事業形態には、本部にとって2つのメリットがあります。

  • 加盟店の資本を用いながら事業展開できること
  • 加盟店の増加によってブランド力の向上を図ることができる

また、加盟店としても以下のようなメリットがあるでしょう。

  • 本部のブランド力を使用することで広告宣伝に費やすお金や手間を少なくできること
  • 商品・サービスの供給や事業のノウハウなどについて本部からのサポートを得られること
  • 事業オーナーとしての経験が少ない人でも安定した事業運営が期待できる

このことから、コンビニエンスストアや飲食店、ガソリンスタンド、学習塾など、さまざまな業態がフランチャイズ形式を採用しています。

3、フランチャイズ事業のリスクと問題点

ただし、フランチャイズは加盟店にとってよいことばかりではありません。過去のトラブル事例などをみると、フランチャイズには以下のようなリスクや問題点が伺えます。

  • 有名な本部でも、フランチャイズとしての事業そのものが必ずしもうまくいくとはかぎらない。
  • 本部が倒産したら、加盟者の事業に何らかの悪影響が出ることが考えられる。
  • 基本的にロイヤルティーの支払いは発生する(加盟者に貸し付けや赤字補てん制度を設けている本部もあり)。
  • 事業をやめたいと思ったとしても、契約期間中の脱退であれば違約金が発生することがある。
  • 加盟者が売る商品やサービスは基本的に本部の指示に従う必要があり、オリジナリティーが出しにくいことがある。
  • 営業時間帯についても本部の意向に従わなくてはならないこともある。
  • 人手数次第ではオーナーや従業員に過大な労働時間を余儀なくされる。
  • 加盟希望者が出店する地域に十分なマーケティングを行わないことがある。
  • 加盟金だけを総取りしようとする悪質な本部が存在する可能性がある。
  • 開店に至らなかったのに、本部が加盟金を返還しないケースもある。

なお、基本的にフランチャイズ事業は、加盟者の事業が立ち行かなくなるリスクがあることを前提としています。本部の責めに帰するような理由で上記のようなリスクや問題点が現実のものとなったとしたら、民事訴訟で争うことになるケースが多いようです。

残念ながら、事業を開始する前に上記のようなリスクや問題点を完全に排除することは難しいでしょう。しかし、当初のフランチャイズ契約の合意内容次第でリスクや問題点を最小にすることは可能です。

4、フランチャイズ事業の契約に関連する法律は?

現在の日本には、フランチャイズの本部を罰則付きで規制し、加盟者を保護することを目的とする直接の法律はありません。ただし、フランチャイズ事業の契約の内容に関連する法律としては、「中小小売商業振興法」や「独占禁止法」があります。

フランチャイズ契約を締結する際は、主としてこの2つの法律に照らして契約書の内容に漏れがないか、加盟者として著しく不利な点はないか、念入りに確認しておきましょう。

  1. (1)中小小売商業振興法

    契約である以上、フランチャイズ契約において加盟者と本部は対等であるはずです。しかし、フランチャイズ事業は本部が展開しています。つまり、前提としてある事実や加盟者になることのリスクなどの情報については、加盟者よりも本部が圧倒的に持っていると考えられます。

    このような情報の非対称性が原因で、加盟者に不利益が生じることもあります。これを防ぐために、中小小売商業振興法ではフランチャイズ契約締結において以下の履行を本部に義務付けています。

    • 加盟希望者に同法が定める重要事項について情報を開示し、十分な説明を行うこと。
    • 重要事項については、「法定開示書面」を加盟者に交付すること。

    また、加盟希望者に対して開示・説明されるべき主な重要事項とは、以下のとおりになります。

    • 代表者、株主、子会社、直近3事業年度の財務状況、フランチャイズ事業の開始時期、直近3事業年度のフランチャイズ店舗数の推移、直近5事業年度のフランチャイズ事業に関する訴訟件数など本部の状況
    • 加盟者に対する競業避止(本部の競合先との取引などを禁止すること)義務および守秘義務の有無について
    • 加盟時に必要な加盟金や保証金などの金銭について
    • 加盟者に対する本部の経営指導や研修、サポート体制について
    • 加盟者が使用できる商標、商号そのほかの表示について
    • 店舗の営業時間、営業日、休業日について
    • 契約違反が認められた際の違約金などのペナルティー
    • 契約期間、契約の更新、契約の解除について
    • そのほか、経済産業省令で定める事項など

    上記については、そのままフランチャイズ契約の契約書にも記載されることが一般的です。なお、中小小売商業振興法における情報の開示・提供は、小売業および飲食業を対象としており、サービス業は対象外となっています。

  2. (2)独占禁止法

    独占禁止法とは、市場経済の健全で公正な競争状態を維持するために、特定の企業が市場を私的に独占することや、不当な取引を行うことなどを禁止する法律です。

    フランチャイズ取引について、公正取引委員会では主に以下のような行為が、本部と加盟者の取引において独占禁止法上問題となる可能性があるとしています。

    • 加盟店を募集する際、本部が虚偽または誇大な開示を行うことなどの手段によって、本部の競合相手の顧客を実際のフランチャイズ・システムの内容よりも著しく優良または有利であると誤認させたうえで不当に勧誘する「ぎまん的顧客誘引」(不公正な取引方法第8項)
    • 本部が加盟店に商品などを供給する際、本部の指定する事業者から他の商品も購入するよう加盟店に強制する「抱き合わせ販売」(不公正な取引方法第10項)
    • 本部または本部指定業者からの仕入れた商品について、加盟者に対し一切の販売価格の決定権を与えない「再販売価格の拘束」(公正な取引方法第12項)
    • 加盟者に他の本部以外の事業者との取引を認めない「拘束的取引」(公正な取引方法第13項)
    • 本部が加盟者より有利な地位であることを利用して、加盟者にとって不当に不利益な取引を行う「優越的地位の濫用」(独占禁止法第2条9項5号、不公正な取引方法第14項)

    公正取引委員会による独占禁止法ガイドラインの情報開示・説明義務は、サービス業についても対象となっています。

5、トラブルを避けるために、弁護士に相談するメリット

新たにフランチャイズ事業のオーナーになることを検討中の方に、ぜひ受け入れていただきたい事実があります。それは、「フランチャイズ事業に関するあなたの情報量と経験値、そして法的知見は、本部と比較すると圧倒的に少ない」可能性があるということです。

フランチャイズ事業に加盟者が失敗してしまう原因が、当初の契約が加盟者にとって著しく不利だったためというケースは少なくありません。立地や需要などのマーケット要因以外で起こり得るリスクとして知っておく必要があります。

だからこそ、フランチャイズ事業に進出する際は、本部との交渉段階から弁護士のサポートを得ておいたほうがよいでしょう。フランチャイズに関する問題の解決に実績と経験のある弁護士であれば、契約書の作成段階においてあなたに不利にならないようなアドバイスを行います。また、必要に応じてあなたの代理人として本部と交渉します。

6、まとめ

弁護士は、適切なフランチャイズ契約を締結できるようリーガルチェックを行うとともに、あらゆる企業法務に関しても法的な知見に基づいたアドバイスを行います。フランチャイズ事業を始めようとお考えであれば、ぜひベリーベスト法律事務所 仙台オフィスまで、お早めにご相談ください。

フランチャイズ事業のオーナーとなったあとでも、ベリーベスト法律事務所ではワンストップで対応可能な顧問弁護士サービスをご提供しています。もちろん、本部とのトラブルのほかアルバイトの雇用契約など、幅広い範囲で対応可能です。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています